たびんちゅ。

【Day38】世界の半分で、愛をさけぶ

2018年5月18日
3カ国目:【イラン】イスファハーン

もうここにいてはいけない。
来る日も来る日もそう思いながら、俺はここイスファハーンに沈没していた。

かつて
「世界の半分がここにある」
と言わしめたほど栄えた都市イスファハーン。



なかなか綺麗な街だ。

俺がここに来て1週間が経つ。
多少は興味のある観光地は全て見たし、毎日町歩きをして大まかな地図は頭に入った。
イランで1番楽しみにしていたラマダンも経験した。

もうここにいる必要は全くない。

それでも俺がここに滞在している理由は、彼女ができたからだ。


自分で言うのもなんだが、彼女は俺のことを好きすぎる。


おとといの夜、散歩していたら仲良くなった家族が、格闘技のジムを経営していた。
「遊びに来てよ!」
というのでお邪魔することにした。


この話を昨日彼女に話したら、ブチ切れられた。

「私とその家族どっちが大事なの!?」

現実世界でこんなこと言う人いるんだな。

他にも
「私以外に連絡先教えないで!」
とか
「返信が遅い!」
とか。

俺も耐えられなくなってブチ切れ返すと、今度は延々と愛を語ってくる。
「愛してる。」
だの
「結婚しよう。」
だの。

天下のメンヘラちゃんだ。


俺もケンカしたくないから上っ面だけの愛を語ってきたがもう限界だ。
嘘の愛を語れば語るほど、彼女の心は満たされていき、俺の心は病んでいく。


病んだ心は私生活にも影響を及ぼし始めた。

長く同じ宿に泊まると、たくさんの旅行者が訪れては去っていく。
1日、2日の関係だ。
今の俺には新しくきた旅行者と話す気力すらない。

本当に末期だ。

動かなければ。



ただし一つだけとどまっていて良かったことがある。
思い出したんだ。
俺がしたいのは「旅」だ。「恋愛」じゃない。

「旅」。
それは初めて訪れる場所に心踊らせること。
新しい国の匂いを嗅ぎ、初めての街並みを見る。
時には暑かったり、寒かったり、数時間前と全く違う装いで街を歩く。
腕時計の時刻を合わせる。
初めて触れる文化に感動し、それを吸収する。
そして新しい人と出会う。
自分の価値観を壊しては再構築を繰り返す。


対して今の俺はどうだ。
同じ場所で毎日デートだけをして、
同じ場所で見飽きた景色を観ようともせず、
洗濯がめんどくさいので何日も同じ服を着回す。
彼女に会う以外することもないのでひたすら時間を潰し、
無感動で毎日を過ごす。
新しくきた旅行者に話しかけもしない。
自ら籠の中に閉じこもる鳥。



こんなことしてる場合じゃないよな。

どこでもいい。

とにかく動け俺。


しかし俺の籠に鍵を掛けようとする彼女に、どうやってこの話題を切り出そうか。

そんなことを考えていると、心のモヤモヤが重い沈殿物のように積もっていき、また俺を動けなくしていった。



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