【Day19】アンバランス
2018年4月29日
2カ国目:【ネパール】ポカラ
大粒な雨が安宿の薄い屋根を打ち付ける。
今日は朝から雨か。
どんよりしたポカラの朝の小道を、どんよりした寝起きの表情で工場直売のパン屋へと向かう。
トレッキングを終えた達成感と疲労感からここ数日何もせずに日々を浪費していた。
朝起きてパンを食べ、ドミトリーのベッドでゴロゴロし、昼飯を食べに街へ繰り出し、カフェでぼーっとする。
するといつのまにかあたりは暗くなっている。
夜になって冷え込む前にシャワーを浴びて、宿から数分のローカル食堂でダルバートを腹一杯食う。
帰り際に1日のご褒美としてコーラとポテトチップスを買って、宿の遅いWi-Fiに少しいらだちながらYouTubeをみて1日を終える身支度を整える。
次の国へ行く予定がなかったらこのままここで沈没していただろう。
まあ今日もこんな天気なので特に何もせず過ごす。
あゝ暇だ。
俺は降り続く雨をぼんやりと見ながら、しかし物凄い集中力で左の脇毛をむしっていた。
右手で左の脇毛をつかんでは引っこ抜きそれを空中に放り投げる。
ひたすらこれを繰り返す。
たまに床に散乱した脇毛を蹴散らして隠蔽する。
プチっというかすかな音とクセになる痛み。
俺はこれに魅了されていた。
一体何回、何十回いや何百回繰り返しただろう。
次第に左の脇毛は薄くなっていった。
これ左
これ右
右利きの俺は左の脇毛だけむしっていたためこのありさまだ。
非常にアンバランス。
右も整えるべきか葛藤する。
そういえば昨日ポカラに来て初めて物乞いの子供に遭遇した。
ボロボロでサイズの合っていないTシャツに裸足で、俺の元にやってきて同情を誘うようにお金を要求する。
10歳くらいだろうか。
久々の物乞いにどうしようかと悩んでいたら彼はまた別の旅行者を見つけそこへ走っていった。
しばらく時間が経ったときまた彼は戻ってきた。
今度はなぜかお金を持っている。
そして腕にタトゥーの入ったいかつめの男の元へ行った。
その男の周りには似たような子供達が3人いた。
そしてまた消える。
次に現れた時10歳くらいのその少年はタバコを吸いながら楽しそうに友達と話していた。
そしてまた別の旅行者の元へ走って行き、表情を180°変えて同情を誘う目つきで物乞いを始めた。
俺が見たのはこれだけなので彼らについてはこれ以上は何も知らない。
ただ思うのは住んでる世界が違うということ。
この世界には生まれた時からこの子達と同じように生きて死んでいく人間が無数にいる一方で、お金持ちの家に生まれて一生この人たちと交わらない人間も果てしなくいる。
この世界のアンバランスをどうするのが最善なのか。
少しでも平等になるように慈善活動でもするか。
ありのままの現実を受け止めて何もしないか。
どっちにしろ俺にはデカすぎる問題なわけで、どうにもできない。
自分がどうしたいのか答えはでない。
ただ左右の脇毛のアンバランスからここまで話題を広げられる自分の想像力には関心する。
「むずかしい問題だなー。」
と思いながら答えの出ないまま
カミソリを片手にシャワールームへ向かった。
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